「事務所を隣の県に移すことになった。建設業許可はそのままで大丈夫だろうか」。
「埼玉の許可で仕事をしてきたけれど、東京に事務所を移したい」。
建設業許可は、営業所がどこにあるかで、どの行政庁の許可を受けるかが決まっています。営業所を都道府県をまたいで動かすときに必要になるのが「許可換え」です。
この記事では、東京都の手引き(令和7年度)をもとに、許可換えが必要になる場面、申請先、手数料、出す書類、先に済ませておくことを整理します。
許可換えが必要になるのは「営業所」が動くとき
建設業許可には、国土交通大臣の許可と、都道府県知事の許可があります。
- 知事許可:1つの都道府県だけに営業所がある場合
- 大臣許可:2つ以上の都道府県に営業所がある場合
ここでいう営業所は、見積・入札・契約など、請負契約を結ぶための実際の仕事をしている事務所のことです。
工事の現場が他県なら、許可換えは要らない
よく聞かれるのがここです。東京都知事の許可を持つ事業者は、都内の本店・支店で結んだ契約の工事であれば、営業所のない他の県でも施工できます。現場が他県というだけでは、許可換えは必要ありません。
ただし、許可を受けている業種の工事を、他の県にある支店で契約する場合は、軽微な工事であっても大臣許可が必要とされています。「現場がどこか」ではなく「どこで契約するか」で考えます。
許可換えの3つのパターンと申請先
手引きでは、営業所の移転や増設があったときの許可換えを、次のように整理しています。
- 東京都の営業所を、他の県へ移す:移転先の県の知事許可へ
- 東京都に加えて、他の県にも営業所を置く:国土交通大臣の許可へ
- 他県の許可や大臣許可の事業者が、営業所を東京都だけにする:東京都知事の許可へ(「許可換え新規」)
申請するのは、許可換え先の行政庁です。東京都から他の県や大臣許可へ移る場合は、東京都ではなく移る先に申請します。大臣許可に当たるかどうかの相談先は、国土交通省の各地方整備局とされています。
必要な書類は行政庁ごとに違います。この先は、3つ目の「他県から東京都へ移ってくる場合」を中心に説明します。
東京都へ移ってくるとき|「許可換え新規」の中身
東京都知事の許可へ切り替える手続きを、手引きでは「許可換え新規」と呼んでいます。
- 手数料:9万円(新規申請と同じ。更新や業種追加の5万円とは違います)
- 許可通知書の写し:今持っている有効な許可の通知書の写しが必要です
書類は「新規」と同じ扱い。経管と技術者の証明をもう一度
ここがいちばん注意したい点です。
業種追加や更新では、常勤役員等(経管)の経営経験を証明する資料は不要とされています。ところが、手引きの書類一覧では、この「不要」の対象に許可換え新規は入っていません。営業所の技術者の実務経験を証明する資料も、不要とされているのは更新のときだけです。
つまり許可換え新規では、すでに許可を持っていても、経管の経験と技術者の要件を、新規申請と同じように資料で示すことになります。前の行政庁で出した資料の控えが残っているかを、早めに確かめておきます。経管の考え方は経管の記事で紹介しています。
新しい営業所の確認資料も必要
営業所の確認資料(建物の全景、入口、事務所の内部の写真など)も、新規と同じように出します。営業所の要件と写真のそろえ方は自宅兼事務所の記事にまとめています。
また、法人の事業税の納税証明書について、前の事業年度が終わったあとに都外から都内へ営業所を移した場合は、転入先の都税事務所に出した届出書の写しを付けるよう案内されています。
先に済ませておくこと|前の行政庁での変更届
手引きでは、許可換え新規の前に、許可換え前の行政庁に相談し、所在地の変更以外に必要な変更手続きを済ませておくよう求めています。役員や技術者が変わっているのに変更届を出していない、という状態のままでは進められません。手引きの冒頭でも、変更届が出ていないと更新などほかの申請ができないと案内されています。
個人事業主の場合、東京都では、登記していない屋号は商号として使えず、個人名での登録になります。前の行政庁で登記していない屋号を商号にしている場合は、先に前の行政庁で名称の変更を済ませておきます。
許可の期限が近いとき
許可換え新規の申請が受理されていれば、今の許可の有効期間が過ぎても、許可・不許可が決まるまでは今の許可が有効とされています。
裏を返すと、期限までに受理してもらうことが大切です。経管や技術者の資料を集め直す時間も見込んで、移転の予定が決まった時点で動き始めます。更新の期限の考え方は更新の記事にまとめています。
財産の要件は、窓口で確かめる
一般建設業の財産の要件には、「自己資本500万円以上」などと並んで、「直前5年間、東京都知事許可を受けて継続して営業した実績」という選択肢があります。手引きの書き方は「東京都知事許可」での実績です。他の県の許可で営業してきた場合にこの選択肢が使えるかは、窓口で確かめてください。使えない場合は、自己資本か預金残高証明書などで示すことになります。
今日できること
- いま「どこの営業所で契約しているか」を書き出す(現場の場所ではなく)
- 今の許可通知書と、前回の申請で出した経管・技術者の資料の控えがあるかを確かめる
- 役員・技術者・所在地以外の変更で、出していない変更届がないかを見る
まとめ
- 許可換えが必要になるのは、営業所を都道府県をまたいで移したり増やしたりするときです。現場が他県というだけでは要りません
- 申請先は許可換え先の行政庁です。東京へ移ってくる場合は「許可換え新規」で、手数料は9万円です
- 許可換え新規の書類は新規と同じ扱い。経管の経験と技術者の要件を、もう一度資料で示します
- 前の行政庁で、所在地以外の変更届を先に済ませておきます
- 申請が受理されていれば、期限が過ぎても結果が出るまで今の許可は有効です
許可換えは、「住所が変わるだけ」と思われがちですが、実際には新規申請に近い準備が必要です。移転の予定が決まったら、引っ越しの日より先に、許可の手続きの段取りを組んでおくことをおすすめします。
「移転を考えているが、許可換えが必要か分からない」「前の申請の資料が手元に残っていない」という方は、ご相談ください。今の許可通知書と営業所の状況を見ながら、何をいつまでにそろえるかを一緒に整理します。
建設業許可の料金と、サポートの内容は、建設業許可サポートのページにまとめています。

