「個人で建設業許可を取って数年。取引先から、そろそろ会社にしたらと言われている」。
個人事業主が会社をつくって事業を移すこと(いわゆる法人成り)は、事業が大きくなるとよく出てくる話です。
ここで気をつけたいのが、建設業許可です。個人で取った許可は、何もしなければ会社には引き継がれません。東京都の手引きでは、個人から法人になる場合、事前に「事業譲渡の認可」を受けないときは新規申請が必要とされています。
この記事では、東京都の手引き(令和7年度)をもとに、許可を途切れさせずに法人へ引き継ぐ方法と、その準備の順番を整理します。
何もしないと、許可の「空白期間」ができる
令和2年9月までは、個人から法人にする場合、個人の許可を廃業し、法人で新しく許可を取り直すしかありませんでした。
手引きでは、この方法だと廃業してから新しい許可が出るまでの間、500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事を請け負えない空白期間ができてしまう、と説明されています。
元請や取引先から許可を求められている場合、この期間は仕事そのものに関わります。新規申請の手数料(9万円)もかかります。
令和2年10月から「事業承継の認可」ができた
令和2年10月1日から、建設業許可の事業承継・相続の認可の制度ができました。
個人事業主が法人成りする場合は、この中の「事業譲渡」にあたります。手引きでも、事業譲渡には「個人から法人への法人成」が含まれると書かれています。
事前に認可を受けておけば、承継の日に、個人の建設業者としての地位を空白期間なく法人が引き継ぐことができます。
- 認可の手続きに、手数料はかかりません
- 許可業者から無許可の会社に引き継ぐ場合は、これまでの許可番号がそのまま引き継がれます
- 認可通知書が許可通知書を兼ね、許可の有効期間は承継の日の翌日から5年になります
受付期間|「承継予定日」から逆算する
事業譲渡の認可は、承継する日より前に受けておく必要があります。あとから申請することはできません。
- 申請の受付:承継予定日の前日の2か月前から25日前まで
- 審査に必要な期間:申請日と承継予定日の間に、開庁日が25日必要
- 承継予定日の条件:今の許可の有効期間が満了する日の30日前より前の日であることが原則
そして、申請の前に都の事前相談があります。手引きでは、事前相談に十分な時間を取ること、承継の方法などの書類を確定させる前に相談することが求められています。
つまり、会社をつくる日・事業を移す日を決めてから動くのではなく、日付を決める段階から都に相談するのが基本の順番です。更新が近い場合は、満了日との関係も先に確かめておきます(更新の記事)。
法人成りで、特に気をつけること
1|承継の日に、会社ができていること
手引きでは、事業承継の日には必ず法人が設立されていることとされています。会社の設立と同時に引き継ぐ場合は、定款に書く「発起人」との事業譲渡契約が必要で、受付のときは予定の定款・役員の一覧を出し、正式なものはあとから出します。
2|社会保険の資格取得日・事業開始日を、承継の日にそろえる
手引きでは、承継の日が社会保険などの資格取得日と事業開始(見込み)日になるように注意するよう書かれています。先に会社をつくった場合でも、これらの日付は承継の日にします。
許可の要件(経管・技術者・社会保険など)が、承継の前後で1日も途切れないことが大切です。社会保険の要件については、建設業許可と社会保険の記事にまとめています。
3|経管・技術者が、承継の日まで常勤していること
常勤役員等(経管)や営業所技術者等(専技)は、承継予定日まで引き続き常勤である必要があります。技術者は、承継の日以降も原則として、業種ごとに同じ人が引き続き常勤していなければなりません。
4|全部の業種をまとめて引き継ぐ
許可を持っている業種のうち、一部だけを引き継ぐことはできません。引き継がない業種がある場合は、事前に一部廃業の届出をしておく必要があります。
5|個人のほうの届出を、先に整えておく
申請の時点で、個人の許可の内容に変更があれば、認可の申請の前に変更届を出します。毎年の決算変更届に出し忘れがないかも、あわせて確かめておくと安心です。
申請で出す主な書類
新規申請とほぼ同じ様式に加えて、事業譲渡ならではの書類があります。
- 譲渡認可申請書(様式第二十二号の五)
- 事業譲渡の契約書の写しなど、承継の方法や条件を示す書類
- 役員等の一覧表、営業所の一覧、技術者の一覧、経管・技術者の証明書など
- 確認資料は、原則として引き継ぐ側(新しい会社)に関するもの
新しく設立する会社の場合は、定款や承継直後の財務諸表など一部の書類を承継の日から30日以内にあとから出すことが認められています。経管・技術者の常勤を示す資料は、承継の日から2週間以内です。期限までに出さないと、認可が取り消される対象になります。
今日できること
- 今の許可の満了日を確かめ、法人成りの時期との前後関係を書き出す
- 会社をつくった後も、経管と技術者を同じ人が務められるかを確かめる
- 決算変更届・変更届に出し忘れがないかを見る
まとめ
- 個人で取った建設業許可は、何もしなければ法人に引き継がれません。その場合は新規申請になり、空白期間ができます
- 令和2年10月から、事前に「事業譲渡の認可」を受ければ、許可を途切れさせずに法人へ引き継げます。手数料はかかりません
- 受付は承継予定日の前日の2か月前から25日前まで。その前に、日付を決める段階から都の事前相談をします
- 承継の日に会社ができていること、社会保険や経管・技術者の要件が1日も途切れないことが大切です
- 一部の業種だけを引き継ぐことはできません。個人の側の届出も先に整えておきます
会社の設立や、法人成りの損得の判断は、司法書士・税理士の領域です。そのうえで、「許可を途切れさせずに会社に移すには、いつ・何から始めればいいか」という段階から、ご相談いただけます。満了日と承継の予定日を並べて、都への事前相談までの段取りを一緒に組み立てます。
建設業許可の料金と、サポートの内容は、建設業許可サポートのページにまとめています。あわせてご覧ください。

