融資で「お金の使い道」をどう説明するか|設備資金と運転資金の分け方と、よくある2つのずれ

事業を続けていると、店舗の移転や設備の入れ替え、取引の拡大などで、金融機関からの借入を考える場面が出てきます。

そのとき必ず聞かれるのが「何に使うお金ですか」という問いです。

「内装にいくら、あとは運転資金として少し」。ご相談の最初は、このくらいの形で伺うことがほとんどです。ただ、融資の審査では、借りたお金を何に使うのかを、根拠のある数字で説明できるかがしっかり見られます。使い道があいまいなままだと、希望額そのものの説明がつかなくなります。

この記事では、すでに事業をしている方が融資を受けるときの、お金の使い道の分け方と、実際のご相談でよく出てくる2つのずれを整理します。


目次

お金の使い道は「設備資金」と「運転資金」に分ける

融資の使い道は、大きく2つに分けて説明します。

  • 設備資金:店舗の内装工事、機械や車両、厨房機器など。形として残り、長く使うもの
  • 運転資金:仕入れ、外注費、人件費、家賃など。事業を回すために出ていくお金

同じ「事業に必要なお金」でも、どちらに入るかで説明の仕方も、返済の期間の考え方も変わります。まずは、これから出ていく支払いを書き出して、この2つに振り分けるところから始めます。


設備資金は「見積書」で根拠を示す

設備資金は、見積書で金額の根拠を示すのが基本です。

  • 内装工事なら、工事会社の見積書
  • 機械や車両なら、販売店の見積書
  • 店舗を移転・新設するなら、保証金や礼金が分かる資料

見積書が届く前に希望額を決めてしまうと、あとで数字が合わなくなります。順番としては、見積書をそろえてから、希望額を決める。これがいちばん手戻りの少ない進め方です。

また、その設備を入れることで売上や利益がどう変わるのかも合わせて聞かれます。返済は、その設備が生み出す利益から行うものだからです。


運転資金は「入金と支払いの時間差」で考える

運転資金は、見積書のような1枚の根拠がありません。すでに事業をしている方の場合は、売上が入金されるまでの間に、先に出ていく支払いがいくらあるかで説明します。

  • 売上を請求してから、入金されるまでに何か月かかるか
  • 仕入れや外注費を、いつ支払っているか
  • 在庫や材料を、どのくらい先に抱えているか

たとえば、材料費や外注費を先に払い、工事代金は完成後に入金される業種では、その時間差の分だけお金が必要になります。売上が増えると、この時間差で必要になるお金も増えます。「売上が伸びているのに、手元のお金が足りない」という状態は、ここから生まれることが多いです。

この説明には、決算書や試算表に加えて、月ごとの入金と支払いを並べた資金繰り表があると伝わりやすくなります。


よくあるずれ1|希望額と内訳の合計が合わない

一つ目は、希望額に対して、使い道の内訳が足りていないケースです。

あるご相談では、希望額に対して、設備資金と運転資金の合計が6割ほどにとどまっていました。残りの部分は「手元のお金を厚くしておきたい」というお考えでした。

お気持ちはよく分かります。ただ、融資は使い道を説明して借りるお金です。「手元を厚くしたい」だけでは使い道の説明になりません。空いている部分は、次のどちらかで整理します。

  • 運転資金の見積もりを見直して、入金と支払いの時間差から根拠のある金額として積み上げる
  • 根拠がつかない部分は、希望額から外す

希望額は、内訳を積み上げた結果として決まるもの。先に金額を決めて、あとから内訳を埋めようとすると、このずれが起きやすくなります。


よくあるずれ2|設備資金だけで借入が埋まってしまう

二つ目は反対に、設備資金だけで借入のほとんどが埋まってしまうケースです。

店舗を新しい場所で構え直すご相談で、内装工事の見積書が届いてみると、物件の契約金と合わせた費用が想定よりかなり大きくなっていました。当初の希望額のままだと、移転後の運転資金として手元に残る金額が、ごくわずかになる計算でした。

新しい店舗は、お客様が戻ってくるまで売上が読みにくい時期があります。そこで運転資金が足りなくなると、せっかく整えたお店を続けることが苦しくなります。

このご相談では、借入額を何通りか並べて、それぞれ移転後に何か月分の支払いが残るかを比べました。そのうえで、運転資金を残せる金額を希望額の候補にしています。設備の費用が払えるかだけでなく、その後の数か月を回せるかまで見て、希望額を決めることが大切です。


お金の使い道は、この順番で整理する

  1. これから出ていく支払いを全部書き出す:設備・仕入れ・人件費・家賃など
  2. 設備資金と運転資金に分ける:形に残るものか、事業を回すために出ていくものか
  3. 設備資金の見積書をそろえる:見積書が届いてから金額を確定する
  4. 資金繰り表で運転資金を確かめる:月ごとの入金と支払いを並べ、足りなくなる月と金額を見る
  5. 手元のお金と合わせて、希望額を決める:内訳の合計から逆算する

融資を受けられるかどうかは、金融機関の審査で決まります。どれだけ準備しても、結果を約束できるものではありません。ただ、使い道が根拠のある数字で整理されていれば、担当の方に聞かれたときにも自分の言葉で説明できます。


まとめ

  • お金の使い道は、設備資金と運転資金に分けて説明する
  • 設備資金は見積書、運転資金は入金と支払いの時間差で根拠を示す
  • 希望額は、内訳を積み上げた結果として決める
  • 設備の費用だけでなく、その後の数か月を回せるかまで見る

「見積書はそろってきたけれど、いくら借りればいいか分からない」「資金繰り表を作ったことがない」という段階でも、ご相談いただけます。支払いの書き出しから一緒に整理します。

融資のときに経営者保証を外すための準備は、こちらの記事で整理しています。

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