「決算が赤字だったけれど、融資の相談に行っていいのだろうか」
すでに事業をしている方から、よくいただくご相談です。赤字の決算書を見せることに気が引けて、相談そのものを先のばしにしてしまう方も少なくありません。
先にお伝えすると、赤字の決算でも、融資の相談をすること自体はできます。ただし、黒字のときと同じように話が進むわけではありません。金融機関の担当の方は、赤字という結果よりも、その中身を確かめようとします。
この記事では、赤字の決算で融資を考えるときに金融機関が見ている3つのことと、申し込む前に整えておきたい準備を整理します。なお、融資を受けられるかどうかは、最終的に金融機関が判断します。
赤字だから、すぐに断られるわけではない
決算書が赤字だと、「それだけで融資は無理なのでは」と考えがちです。
実際には、赤字にはいろいろな理由があります。大きな設備を入れて費用が先に出た年、取引先が1社なくなった年、開業してまだ売上が立ちきっていない年。同じ赤字でも、理由によって意味がまったく違います。
金融機関が知りたいのは、「この会社は、借りたお金を返していけるか」ということです。赤字の決算は、その判断の材料の1つにすぎません。だからこそ、赤字の中身を自分の言葉で説明できるかどうかが、話の進み方を大きく分けます。
一方で、赤字の理由が分からないまま、「とりあえず申し込んでみる」のはおすすめしません。説明が組み立てられていない状態で出すと、それが記録に残り、次に相談するときの足かせになることもあります。
金融機関が見る1つ目|赤字の理由は「一時的」か
最初に見られるのは、赤字の理由です。
大きく分けると、一時的な理由と、続いてしまう理由があります。
- 一時的な理由の例:設備の入れ替えで費用が一度に出た/大口の取引先がなくなったが、すでに次の取引先が決まっている/開業1期目で、売上が立つ前の費用が先に出た
- 続いてしまう理由の例:売上に対して毎月の固定費が重い/値段が原価に見合っていない/売上が数年続けて下がっている
一時的な理由であれば、「なぜ赤字になったか」と「その理由はもう解消しているか」を説明できれば、話は前に進みやすくなります。
続いてしまう理由の場合は、融資を受ける前に、何を変えれば赤字が止まるのかを先に示す必要があります。お金を借りても、赤字の原因がそのままなら、借りたお金も同じように出ていってしまうからです。
2つ目|黒字に戻る道筋が、数字で見えるか
2つ目は、これから黒字に戻っていく道筋です。
ここで大切なのは、計画の言葉より、今の数字です。決算から時間がたっていれば、今期の試算表を求められます。決算は赤字でも、今期の試算表で月ごとの利益がプラスに転じていれば、それが何よりの説明になります。
まだ黒字に戻っていない場合は、「いつ、何によって戻るのか」を具体的に示します。たとえば、
- 新しい取引先との契約が決まり、来月から売上が入る
- 家賃の安い場所に移り、毎月の固定費が下がった
- 値段を見直し、1件あたりの利益が上がった
こうした変化を、契約書・請求書・見積書などの現物で示せると、話の重みが変わります。「これから頑張ります」という言葉だけでは、担当の方も判断のしようがありません。
3つ目|返していくお金が、どこから生まれるか
3つ目は、借りたお金を返していく元になるお金です。
毎月の返済は、事業で生まれるお金の中から払っていくことになります。赤字の状態では、この「返していくお金」がまだ生まれていないことになるため、金融機関はここを特に丁寧に確かめます。
そこで役に立つのが、資金繰り表です。これから毎月いくら入って、いくら出て、手元にいくら残るかを並べ、新しく借りる分の返済も入れたうえで、月末の残高が途中でマイナスにならないかを確かめます。
あわせて、今ある借入もすべて一覧にしておきます。すでに返済が重くなっているなら、新しく借りるより先に、今の返済の形を見直す相談をしたほうがよい場合もあります。
資金繰り表や借入の一覧など、申し込むときの書類の全体像は、事業の融資を申し込むときに出す書類で詳しく整理しています。
「何に使うお金か」を、赤字の穴埋めにしない
赤字のときにいちばん気をつけたいのが、お金の使い道の説明です。
「赤字で手元のお金が減ったので、その分を借りたい」という説明は、金融機関から見ると、赤字が続けばまた足りなくなると読めてしまいます。
同じ運転資金でも、「新しい取引先との仕事が始まり、入金までの2か月分の仕入れと外注費が先に必要になる」のように、何のために、なぜ今、いくら必要かが具体的であるほど、話は伝わりやすくなります。
使い道の分け方については、融資で「お金の使い道」をどう説明するかもあわせてご覧ください。
申し込む前に整えておきたい4つのこと
赤字の決算で融資を考えるときは、次の順番で準備しておくと、相談の場で短く答えられるようになります。
- 赤字の理由を1〜2行で書き出す:一時的か、続いてしまうものか。数字の中身で分からないところは、決算書を作った税理士さんに確認しておきます
- 試算表を最新の月まで整える:今期の数字が、決算から良くなっているかを自分で確かめます
- 黒字に戻る根拠を、現物でそろえる:契約書・請求書・見積書・固定費を下げた記録など
- 資金繰り表を作る:新しい借入とその返済を入れて、月末の残高がマイナスにならないかを確かめます
この4つを整えてみて、まだ説明が組み立てられないときは、「今は申し込まない」という判断も大切な選択肢です。数か月かけて試算表の数字を良くしてから相談したほうが、結果的に早く進むこともあります。
赤字の決算は、隠すより説明するもの
赤字の決算書を見せるのは、だれにとっても気が重いものです。けれど、金融機関の担当の方は、赤字の会社を数多く見てきています。大切なのは、赤字を小さく見せることではなく、理由と、これからの道筋を、数字と現物で説明できることです。
自分では説明を組み立てにくいと感じたら、申し込む前に、一度だれかに話してみてください。決算書から資金繰り表までを一緒に整理したい方は、融資・資金調達のサポートのページもご覧ください。
あなたの会社の赤字は、一時的なものですか。それとも、続いてしまうものですか。

