すでに事業をしている方が、運転資金や設備資金の融資を申し込むと、いくつもの書類を求められます。
決算書、試算表、資金繰り表、借入の一覧……。「言われたものを集めて出せばいい」と思われがちですが、ここで差がつきます。
先にお伝えすると、見られているのは書類の枚数ではありません。過去の数字(決算書)と、今の数字(試算表)と、これからの計画が、1本の話としてつながっているか。金融機関の担当の方は、そこを読み取ろうとしています。
この記事では、事業の融資でよく求められる書類と、それぞれの見られ方、準備の順番を整理します。
創業の融資と、事業の融資の違い
これから事業を始める方の融資は、まだ実績がないため、計画と本人の経験が中心に見られます。
一方、すでに事業をしている方の融資は、実績の数字があることが前提です。どれだけ立派な計画を書いても、決算書の数字とかけ離れていれば、その理由を聞かれます。
つまり事業の融資では、「これまでこうだった、今はこうなっている、だからこれからこうする」という流れを、書類で示すことになります。
よく求められる5つの書類
求められる書類は金融機関や融資の種類によって異なりますが、多くの場合、次のようなものを出します。
- 決算書(直近2〜3期分。個人事業の方は確定申告書と決算書)
- 試算表(今期の、直近の月までの数字)
- 資金繰り表(これから数か月〜1年の、お金の出入りの見込み)
- 借入の一覧(どこから、いくら、毎月いくら返しているか)
- 使い道の根拠(設備なら見積書、運転資金なら必要になる理由が分かるもの)
このほか、事業の内容が分かる資料や、許認可が必要な業種ならその許可証の写しなどを求められることもあります。申し込む前に、窓口で一覧をもらっておくと準備がぶれません。
決算書|「過去」をどう説明できるか
決算書で最初に見られるのは、売上と利益の動きです。増えているか、減っているか、赤字の期があるか。
大切なのは、数字そのものより、その動きを自分の言葉で説明できるかです。たとえば売上が下がった期があっても、「大口の取引先が1社なくなったが、翌期に新しい取引先で戻している」と説明できれば、話の見え方は変わります。
逆に、理由が分からないまま出すと、面談でそこを聞かれて答えに詰まります。決算書を出す前に、各期の売上・利益の増減を1行ずつ説明できるようにしておきます。数字の中身で分からないところは、決算書を作った税理士さんに確認しておくと安心です。
試算表|「今」が決算書とつながっているか
決算から時間がたっている場合、今期の状況を見るために試算表を求められます。
ここでよくあるのが、試算表が何か月も前のままになっていることです。帳簿の入力が遅れていると、申し込むときに慌てて整えることになり、それだけで日数がかかります。
また、決算書では黒字だったのに、試算表では赤字に見える、ということもあります。季節で売上が偏る業種なら、それ自体はおかしなことではありません。その場合も、なぜそうなっているかを一言で説明できるようにしておきます。
資金繰り表と借入の一覧|「これから」返していけるか
融資でいちばん大切なのは、借りたお金を返していけるかどうかです。それを示すのが、資金繰り表と借入の一覧です。
資金繰り表は、毎月いくら入って、いくら出て、手元にいくら残るかの見込みです。新しく借りる分の返済も入れたうえで、残高が途中でマイナスにならないかを確かめます。
借入の一覧は、今ある借入をすべて並べたものです。ここが抜けていると、あとから分かったときに信頼を損ねます。毎月の返済額の合計が、事業で生まれるお金の範囲に収まっているか。まず自分で確かめておきます。
なお、使い道の分け方(設備資金と運転資金)については、融資で「お金の使い道」をどう説明するかで詳しく整理しています。
よくある3つのずれ
書類を拝見していて、よく見かけるずれが3つあります。
1つ目は、計画の売上が、決算書の実績から急に伸びていること。これまで横ばいだった売上が、計画では来年から大きく増えている。増える理由(新しい取引先、設備で増える生産量など)が書かれていないと、計画全体が読まれにくくなります。
2つ目は、資金繰り表に、新しい借入の返済が入っていないこと。借りたお金は入金として入っているのに、毎月の返済が出金に入っていない。これでは、返していけるかどうかが確かめられません。
3つ目は、書類ごとに数字が少しずつ違うこと。借入の一覧の残高と、試算表の借入金の残高が合っていない。小さなずれでも、ほかの数字まで確かめ直されるきっかけになります。
準備は「今の数字」から
書類を集める順番は、次がおすすめです。
- 試算表を最新の月まで整える:今の数字がないと、ほかの書類が作れない
- 借入の一覧を作る:今の返済の重さを、自分で把握する
- 決算書を読み直す:各期の増減の理由を1行ずつ書き出す
- 資金繰り表を作る:新しい借入とその返済を入れて、残高を確かめる
- 使い道の根拠をそろえる:見積書や、運転資金が必要になる理由をまとめる
1と2ができるだけで、「いくら借りる必要があるのか」「本当に今借りるべきか」が見えてきます。
書類がそろったら、一度だれかに説明してみる
書類は、作った本人ほどつながりの抜けに気づきにくいものです。決算書から計画までを、5分ほどでだれかに説明してみると、詰まるところがはっきりします。
借りることがゴールではなく、借りたあとに返していける形になっているか。そこまで一緒に確かめたい方は、融資・資金調達のサポートのページもご覧ください。
あなたの試算表は、今、何月分まで出来上がっていますか。

