開業前に、自己資金を使い込んでしまう人がいます。
「まだ動いていないから」「本番はこれからだから」。そう思っているうちに、手元のお金は少しずつ減っていく。気づいたときには、自己資金と呼べるものが、ほとんど残っていない。
そういうご相談を、これまで何度か受けてきました。
自己資金は、なぜそんなに見られるのか
自己資金がなぜ重要なのか。理由を聞かれると、はっきり答えられる人は意外と多くありません。
金融機関が自己資金を見るのは、意地悪でも慣習でもありません。理由は主に3つです。
① 貯める力の証明
事業は、計画通りにいかないことの連続です。毎月いくらかを、目的のために取り分けて残す。それができる人は、事業のお金も同じように扱える可能性が高い。自己資金は、その唯一の物的な証拠です。
② うまくいかない時のクッション
開業直後は、想定より入金が遅れる、想定より支払いが先に来る、ということが普通に起きます。自己資金は、そのズレを埋める緩衝材です。ゼロだと、最初のつまずきで資金繰りが止まります。
③ リスクを分け合う姿勢
融資は、金融機関だけがリスクを背負う仕組みではありません。自分もいくらか自分のお金を投じている。その姿勢自体が、相手に対する説得材料になります。
制度上はゼロでもいい。でも、窓口の実態は違う
日本政策金融公庫の創業融資は、制度上、自己資金の要件がすでになくなっています。書類の上では、ゼロでも申し込みはできることになっています。
でも、実際に窓口へ相談に行くと、自己資金がほぼゼロの場合「まずは自己資金を貯めてから、また来てください」と、本題に入る前に言われることがあります。
制度の建前と、現場の運用の間には、静かなギャップがあります。「知らなかった」「後から何とかなる」では、済まされない現実です。ここは、期待を持たせるより先に、正直に伝えておきたいところです。
私自身、開業前に自己資金を甘く見て、遠回りをした経験があります。詳しい経緯はここでは省きますが、同じ思いをしてほしくないので、あえて厳しめに書いています。
今日できる一歩
過去は変えられません。でも、なぜ自己資金が大事なのかを理解した今日から、扱い方は変えられます。
紙に、次の2つだけ書いてみてください。
- 今、手元にいくら残っているか
- 今日から、何のために、毎月いくらを残していくか
自分を責めるための作業ではありません。現実を、事実として見る作業です。
窓口で「まずは貯めてから」と言われたら、そこで終わりにしなくて大丈夫です。「何を、どう貯め直すか」は、一緒に整理できます。
ふだんは、お金の整理のヒントをLINE「お金の流れ整理ラボ」でも少しずつ届けています。よければ、のぞいてみてください。
※このお話は、お金の流れを整理・見える化するためのものです。税額や税務上の取り扱いの判断は、税理士(税理士法第52条)にご確認ください。

