行政書士の仕事は、どこまでAIに任せていいのか

「AIを使った方がいいのは分かっている」

同業の先生方と話していると、最近この話になることが増えました。そして、たいていその次に続く言葉が同じです。

「でも、何から手をつければいいのか分からない」


目次

「AIを使えていない」の正体

はじめは、ツールを知らないからだと思っていました。

でも話を聞いていると、そうではありませんでした。みなさん、すでにChatGPTは触っています。文章を書かせたことも、調べ物をさせたこともある。

止まっているのは、その先でした。

どこまで任せていいのか分からない。

私たちの仕事には、責任があります。書類を出せば、それが誰かの許可になり、誰かの生活になる。だから怖くて任せられない。

この慎重さは、正しいと思います。問題は、慎重であることではなく、慎重さの置き場所が決まっていないことです。


私が最初に間違えたこと

建設業許可の案件で、要件の該当性をAIに聞いたことがあります。

もっともらしい答えが返ってきました。文章もきれいで、根拠らしきものも添えられていた。

念のため、東京都の手引きを開きました。違っていました。

AIは、間違いを自信たっぷりに言います。しかも読みやすい文章で言うので、正しく見えてしまう。慌てて確認した記憶が、今も残っています。

このとき気づいたことがあります。私はAIに「調べさせて」いたつもりで、実際には「決めさせて」いたのです。

線を引いていなかった。それだけのことでした。


任せていいのは作業、残るのは判断

AIに奪われるのは作業です。判断は残ります。

この一文が、私の線引きの基準になりました。実際に分けてみると、こうなります。

任せていい

  • 面談メモの文字起こし
  • 案内文やメールの下書き
  • 書式の整形、体裁の統一
  • 長い資料の要約
  • 記入漏れ・添付漏れのチェック

任せてはいけない

  • 要件に該当するかどうかの判断
  • お客様に何をお伝えするかの判断
  • その書類を出すかどうかの判断

書き出してみると、当たり前のことしか書いていません。でも、これを紙に書くまで、私はずっと「AIは怖い」と漠然と思っていました。

線を引くと、怖さが減ります。任せてはいけない側が守られていれば、任せていい側は思い切り任せられるからです。

なお、税務や労務のように、そもそも私たちの業務範囲の外にあるものは、AIを使う使わない以前の話です。ここは線引きの手前にあります。


お客様の情報を、どこまで入れていいか

もう一つ、必ず出てくる論点があります。守秘義務です。

私たちには秘密を守る義務があります。相談内容も、決算書も、家族構成も、全部その中に入る。ここが引っかかって手を止めている方は、多いのではないでしょうか。

私は、こう分けています。

固有名詞と数字は渡さない。構造だけを渡す。

たとえば「A社の経管が5年に届かない。前職の経営経験と通算できるか」という相談を、そのまま社名や個人名を入れて投げることはしません。社名を伏せ、期間だけを渡す。相談したいのは要件の構造であって、そのお客様が誰かではないからです。

そのうえで、入力した内容が学習に使われない設定になっているかを確認する。ここは各サービスの設定画面で切り替えられます。

伏せられないほど個別の事情なら、それはもう判断の領域です。AIに渡す話ではなく、自分で考えるか、窓口に相談する話になります。

守秘義務を守ろうとすると、結果的に「作業と判断の線」も一緒に引けます。二つは別々の話に見えて、同じところに落ち着きました。


線引きの前に、棚卸しがいる

ただ、この線を引こうとして、多くの方が止まります。私も止まりました。

理由ははっきりしています。自分の仕事を工程に分けていないと、線が引けないのです。

「建設業許可の新規申請」は、ひとかたまりに見えます。でも実際には、十数個の工程の集まりです。ヒアリング、要件の確認、必要書類の一覧化、収集の依頼、内容の点検、書類の作成、窓口相談、提出、進捗の報告。

このくらいまで割って初めて、「ここは任せられる」「ここは絶対に自分だ」が見えてきます。

私は今、要件の確認をAIにやらせるときは、必ず手引きの該当箇所を逐語で引用させる形にしています。判定だけを返させない。根拠の原文を横に置かせる。

そうすると、私がやる作業が変わりました。読解ではなく、照合です。手引きを最初から読む時間は減りましたが、確認をやめたわけではありません。

やめたのは作業で、残したのは判断でした。


今日できる一歩

もし何か一つだけやるとしたら、これをお勧めします。

直近で終わった案件を1件だけ選んで、工程を紙に書き出す。

それだけです。AIには触れなくて構いません。書き出した工程の横に、後から「任せる」「任せない」を書き足していけば、それがそのまま自分用の線引きになります。

新しいツールを覚える必要はありません。必要なのは、自分の仕事を分けて見ることでした。

AIの話になると、置いていかれるような気持ちが先に立ちます。私もそうでした。でも実際にやったことは、自分の仕事を紙に書き出しただけです。

だから、一人で抱えなくていい。


「ここは絶対に自分でやる」を、聞かせてください

みなさんは、どの工程までAIに任せていますか。逆に「ここは絶対に自分でやる」と決めている工程はありますか。

他の先生がどこで線を引いているのかは、私自身が一番知りたいところです。

いま、行政書士の方がAIを実際にどう使っているのか、どこで手が止まっているのかを、直接伺いたいと思っています。

30分ほどお話を聞かせてくださる方がいらっしゃいましたら、お問い合わせからご連絡いただけると嬉しいです。売り込みではありません。私が知りたいだけです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次